活動レポート(ブログ)

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インド・ネパール タッピングタッチ研修

2016/03/15海外活動

Visiting India & Nepal 2016

 インドとネパールを訪れ、タッピングタッチの講座と支援をおこなってきました。
3月1日に出かけ、帰国したのが13日でしたから、正味11日間の旅でした。
まだ帰って二日目で、時差と疲れが残っている状態ですが、少し文章にてお伝えします。
 日本からのフライトの乗り継ぎをいくつかして、インドのカルカッタに着いたのが1日の夜中。アシスタントとしての参加の石田有紀さんとの合流は無事にできたものの、予定されていた迎えが見当たらず、急きょホテルを手配してカルカッタ市内で宿泊。多くの国では、「現地へ行ってみないと分からない」ことが多いのですが、しょっぱなからでやはり冷や汗もの・・・

 翌日、カルカッタからオリッサ郡のブバネーショワルまで、鉄道で南下。よく使いこまれてきた感じのある、どっしりとしたExpress Train。6時間ほどかけて着いた駅で、ようやく現地の迎えの人たちと合流。そこからまた350キロほどの険しい道を自動車で6時間。ようやく最初の研修場所であるソーリー村に着いたのが午前3時頃。翌日の午前中から、その地域の教育やケアにたずさわる人たちを対象にした2日研修をはじめる、といった旅の始まりでした。
 ここでは、今回の研修と支援の旅でとくに印象にのこったことや私にとっての大切な学びなどを二つだけ書いてみたいと思います。

 まず、今回の旅は、暑いインドとまだ肌寒いネパールの両方をまたいだジャーニーだったことに加え、文化や言葉のチャレンジを多く感じたものでした。どちらの国の言葉もできない私たちとって、英語でしかコミュニケーションをとれないのですが、現地のNGOの職員さんでさえ英語の達者でない人が多いのが現実です。けっこうできそうな人でも、「インド英語」だったりして、英語で話してくださっているはずなのですが、かろうじて内容の主旨がつかめる、ってこともよくあることでした。
 2国への訪問で、Tapping Touch International Basic Trainingというものを計3回(2日研修を1回、1日研修を2回)おこなったのですが、それぞれに通訳をしてくれる人が違い、その程度によって話のニュアンスなど、伝わり方がまったく違ってきます。
そのうえネパールでは、電気の配給制があってプロジェクターが使えないこともあり、教えることに工夫と柔軟性を求められることが常でした。これまでアフリカなどを含め、様々な条件で教えてきましたから、なんとかなりはしましたが、やはり言葉が自由に使えず、お互い伝えたいこと、聞きたいことがスムーズにできない時は、ほんとに歯がゆい思いをします。

 そんななか、タッピングタッチ自体は、異文化、言葉のハンディ、気候の違い、停電などをものともせず、しっかりと役立ち、伝わっていってくれました。例えば、上記した初めの研修先のソーリー村にあるChild Development Centerでの研修には、教師なども含む50人ほどの方が2日研修を受けてくださったのですが、たいへん熱心でした。
 この地域の人々にとって、タッピングタッチはとても異文化なものだった可能性がありますが、大切に学び、受けとっていただけました。受講生の一人は、近隣の小学校の校長先生でしたが、学校で導入したいからと、さっそく私たちを呼んで、子ども達に教える機会も頂きました。どこでも、タッピングタッチの優しくゆったりしたタッチとケアは、やはりたいへん好評でした。

 もう一つ大切に感じたことは、タッピングタッチはケアの手法であり、治療法やセラピーではないということです。(英語では It is a method of care と表現することが多かったのですが、ケアのメソッドであり、ケアし合う為のメソッドですね。)
 タッピングタッチは、治療法ではない、ということは何かを治そうとしてトラブルが起こらないように、また、医療行為にならないことで問題がおこらないように、といった理由が含まれていますが、海外での研修でより明確になることは、「治す・治さない」「治る・治らない」といった二極論に陥らないことの大切さです。
現代は、多くの国で、災害、紛争、汚染、貧困、劣悪の仕事や生活環境などが原因で、様々な病気や障害が増えています。その為、一般の人々も専門家もなんとかその病気や苦しみを軽減する為に、よい治療法や解決策を求めるわけですが、落とし穴としては、治るのか治らないのか、といった二極論に堕ちいってしまうことです。
 今回、インドとネパールでおこなった研修でも「TTは治るのか?治るとしたらどんな病気に効くのか?日に何度すれば効いてくるのか?」といった質問がよくありました。
その度に私は、『タッピングタッチはケアのメソッドであり、「治る・治らない」にこだわり過ぎず、「お互いをケアしあう」ということを一番大切にしたい。その結果として、とてもよいことが起こることをたくさん見てきました』といった主旨のことを丁寧に説明しました。
 以前にインドのチェンマイでおこなった研修では、ポリオによる強い障害のある若者へのタッピングタッチをおこないました。その父親とソーシャルワーカーに仕方を教える研修風景のビデオを観たかたもおられると思いますが、身体への変化はあまりありませんでした。でもこの体験で学べることは、やはり、病気や障害がとくに変化しなくても、家族でのケアがとても貴重であること。そして、外面的には変化が見られなくとも、心が癒されたり、関係性が変化したりすることが多いこと。その内面の変化によって、人々が厳しさをのり越え、心優しく、力強く生きていくことが可能になるだろうこと・・・そんなことが含まれていました。
 今回の旅では、ネパールの大地震による甚大な被害を受けた山岳地帯へもタッピングタッチを届けることができました。そこでは、主にメンタルヘルスの自助グループと母親のグループへの講座が主でしたが、原因も治療法も不明の、脊髄側弯症のような症状を持った子どもと母親にも会うことができました。
 ここでは詳しい説明を避けますが、タッピングタッチをしばらくしていると、子どもの痛々しく、かたく折れ曲がっている手足が緩みました。苦しそうな声や表情も収まり、少しずつ笑顔が見えてきたころ、母親と交代し、仕方を教えながら、ケアのタッチを学んで頂きました。楽そうにしている子供をケアする母親からは深い愛情が感じられて、ジンときました。そのあと、この母親にも石田さんからタッピングタッチを受けてもらいましたが、終わって「ほんとよい気持ちです」と言われた時の素晴らしい笑顔が、今も心に深く残っています。
 この時も大きな変化があったわけでもなく、病気が治ったわけでもありません。でも、ケアされた子供が楽になり、幸せを感じているような様子、その愛しい子供をケアする母親の愛、この子が痛がったり苦しがったりした時に、それを楽にできるケアの方法を学んだことによる安堵感、そして、継続してケアしていくことで起こるかもしれない治癒的効果への希望など・・・様ざまな効用を感じることができました。これらはすべて、「治る・治らない」という視点からは見えにくいものだと思います。そしてもっと深い所のケアや愛情といったものの大切さや素晴らしさを教えてくれるのではないかと感じています。

結局ながい文章になってしまいましたが、今回の海外訪問の様子や学びを感じていただけたでしょうか? 少し落ち着いたらレポートを書いたり、講座などでいろいろとお伝えしたりしたいと思いますので、楽しみにしていただければと思います。
 とにかく、前回のカンボジア訪問に加えて、インドとネパールでの厳しい環境や生活に触れ、タッピングタッチを伝えることを通して、タッピングタッチの本質が見え、海外の人々や家族にもとても役立つことがよく分かりました。そして、今の時代の厳しい現状
にタッピングタッチがとても役立ち、求められていることも実感できました。
 このことで、私はがぜんやる気が出てきていて、みなさんと本腰をいれて国内外での種まきに精をだしたいと感じています。みなさんとご一緒できることを楽しみにしています。

一音 (中川一郎) 2016年3月15日

ベトナムでの活動報告

2009/03/28海外活動

お元気ですか?私は、無事ベトナムから帰ってはや2週間になります。これまでいろんな国を訪れてきましたが、ベトナムは日本の文化や環境との対極にあるような感じで、今回は強いカルチャーショックをうけました。

ベトナムではホーチミン市を訪れ、ストリートチルドレンの施設 (FFSC)での実践とリサーチを行ってきました。戦争の傷を癒し、平和を育てることのお手伝いになる実感があり、ほんとうによかったです。

それと、戦争(特に枯葉剤)による後遺症で苦しんでいる子どもたちがケアされている病院、べトちゃんドクちゃんで知られているツーズー病院なども訪問してきました。そこでは、何人かにタッピングタッチをさせてもらい、体が硬直してしまっているような子供たちの体が、驚くほど柔らかくなっていった事例もあり、とても役立ちそうな感触がありました。

施設のスタッフやシスター達にもタッピングタッチの良さをよく知ってもらうことができ、週一でタッピングタッチをスケジュールに組み込んでみたいとのことでした。ベトナム政府が運営する病院などでも研修の依頼をもらえたので、スタッフ研修やインストラクターの養成などを含め、8月頃に再度訪れることを相談しています。(研修ツアーやサポートに興味のある方は、ご連絡ください)

とにかく、今回は、1)心身のケアのニーズの高い発展途上国においても、たいへん役立つことが確信できたこと、2)ダイオキシン(枯葉剤)で苦しんでいる子供達にも役立ちそうだという2点において、収穫の多い旅でした。病院などの事例などを含めて、10月の日本心理臨床学会でも発表する予定です。

話は変わりますが、先日、三重県立看護大学での講座をしたのですが、たまたま妊娠6ヶ月の人が参加されていました。タッピングタッチをし合っていると、お腹の赤ちゃんがいつもの「蹴り」のような感じではなくて、やさしいトントンのような感じで動いていたって、とても喜んでおられました。

「ここにいるよ〜 楽しいよ〜」っていうコミュニケーションだったんでしょうか。これまで一才くらいの子がお母さん達がしあっている横で、見よう見まねでしているのは見たことがありますが、胎児がタッピングタッチのセッションに参加したとは!!

とにかくタッピングタッチはしっかり育っています。これまで日本のみなさんに大切に育てられてきたタッピングタッチっていう種が、今度はベトナムで育っていきそうな気配です。

スケジュールには、ベトナムの子供たちの描画やビデオなどを交えたセミナーなど、いろいろと企画しましたので、ぜひご参加ください。またお会いできるのを楽しみにしています。

中川いちろう 2009年3月28日

タッピング・タッチをハワイで紹介!

2008/02/03海外活動

2008年1月21日〜25日

  

2008年1月21日 ビーチにてポトラック(持ち寄り)パーティーに参加!

 

きっかけは、仙台にあるDICT統合カウンセリングにて、タッピング・タッチの講座を受けたMimi Demura-Devour(出村デボアひとみ)さんが、ハワイでソーシャルワーカーとして働いていることでした。

直前のアレンジメントにもかかわらず、まずは到着した日そうそうに、彼女の家族と一緒にプライベートなビーチでのパーティーに招待してくれて、そこでタッピング・タッチのミニ講座!
実は友人の一人であるマーカスの誕生日でした。このマーカスは、パートナーのジャネットと Zahana Project
www.zahana.org というアフリカのマダガスカル島の村をサポートしています。彼らは、タッピング・タッチを経験して、また一郎さんの熱心な説明に感銘して、ハワイで会うべき人々!?に速攻で、繋げてくれました。パワフル!

2008年1月22日 ちょっとヨットでお楽しみ

 

人に会うのに忙しかったハワイでの4日間、唯一楽しんだ2時間のヨットツアーでした。沖合いに出て、帰ってくるだけのツアーですが、ドルフィンが遊びに来てくれたりで、やみつきになりそうな楽しさでしたよん!

ホスピス・ハワイ プログラム・デイレクター訪問

ツアーから戻って、あたふたとMimi さんの車に乗り込んで・・・ホスピス・ハワイのチャプリン(牧師)でもあるディレクターのクラレンス・リウさんに面会。

翌日カリフォルニアでのワークショップ参加に出発するとのことでしたが、快く時間を割いてくれました。実際にタッピング・タッチを一郎さんが説明しながらやってあげると、じんわりと味わい、すぐにプログラムの中の「遺族のケア」で使えないかと、反応が早い!神戸の遺族会「ひまわりの会」でタッピング・タッチとピアカウンセリングを使っている話しをすると、さもありなん!と納得顔。互いにケアする効果にすぐに着目されました。
 ホスピス・緩和ケア関係専門家向けのタッピング・タッチ講座をハワイで、という方向に話しがすすみ、ホスピス・ハワイで力を入れているスピリチュアルな側面を日本からの人たちが学べるような、相互学習の機会になればと話し合いました。

2008年1月23日 ハワイ大学にて

今回ハワイ滞在の一番の目的はこれ。
APAN(Asia-Pacific Advance Network) の年次大会にて、中川一郎さんが三重大学客員教授として「統合的災害支援におけるタッピングタッチのありかた」というテーマで発表しました。

  

APAN (Asia-Pacific Advanced Network ) is a non-profit international consortium established on 3 June 1997. APAN is designed to be a high-performance network for research and development on advanced next generation applications and services. APAN provides an advanced networking environment for the research and education community in the Asia-Pacific region, and promotes global collaboration.
APAN は非営利の1997年に設立された国際協会で、高等次世代アプリケーションソフトとサービスの研究と開発のための高機能ネットワークとして計画されました。アジア太平洋地域に研究と教育のための高等ネットワーク環境を提供し、グローバルな協力を促進しています。

参加者は主に、アジア各国や米国からのコンピューター関係の大学教授や研究者なのですが、一郎さんが発表したセクションは、e-culture といって、インターネット上での文化的交流を行うものでした。

出席された三重大学の櫻井先生、ほか数名と夕食後にパチリ。

真ん中の バーナード・フィッシャーさんは米国のバージニア大学にあるThe Institute for Advanced Technology in the Humanities という研究所の所長ですが、タッピング・タッチの大ファンになってくれ、是非、誰でも手に取れる平易なタッピング・タッチの本を出すべきだ!と背中を押してくれた、ねっから明るいおじさまでした。
余談ですが、私(祥子)がつけているアクセサリーと小花模様プリントのタンクトップの組み合わせが、ロンドンのなんとかいう店?の組み合わせに見えて、どうしてもアメリカ人に見える・・・とか言って、女性のファッションにも興味を示してくれる話題豊富な方でした。こういう人だと、私のさびつきかけている英語もスラスラ・・・?

2008年1月24日 ホスピス・ハワイにて

Mimiさんのアレンジでソーシャル・ワーカー向けトレーニングとして、タッピング・タッチ講座実施

  

日ごろに死期が近い人々に接しているからでしょうか、皆さんの相手に丁度よいタッチの手つきがなんともすばらしいものでした。その習得の速さと、相手との距離をうまくとってタッピング・タッチに浸っている様子に感心していたら、「日本の人たちにも素敵な人たちは沢山いるよ!」といちろうさんに、たしなめられました・・・(すみません皆さん)
ホスピス・ハワイではかなりスピリチュアルケアにも力を入れており、スタッフも瞑想をしている人も多いとか。自分の中心をしっかり持っている感じがしました。

ホスピス・ハワイの施設(Palolo Home)を訪問   日系の高齢者ベッドサイド

 

ホスピス・ハワイはパロロ・ホームとカイルア・ホームの二つの施設を持っています。どちらも5−6床の小さな家で、小奇麗な快適でアットホームな雰囲気の終末ケアハウスです。

たまたま訪問したとき、意識はあるけれど、反応の少ない日系女性がおられ、タッピング・タッチをさせてもらいました。口頭でのやりとりはありませんでしたが、目じりがうるんで呼吸が少し楽になったかなあ・・・

2008年1月25日 浄土真宗本願寺別院 & パシフィック・ブディスト・アカデミィー訪問
Honpa Hongwanji Betsuin

お寺本堂を外から見ると、まるでインドのパゴダ

本堂の中はキリスト教会風。丁度親鸞聖人の命日のお参りをしていました。

併設している学校
Pacific Buddhist Academy
http://pacificbuddhistacademy.org/index.html
はこじんまりと明るく楽しそうな雰囲気

校長のパイパー・トヤマさんとミーティング

まずは、パイパーさんが学校の説明と大事にしている仏教の教えをいかに、教育に取り入れているかを、熱意を持って語ってくれました。校長室には、仏壇があり、生徒指導には叱るのではなく、一緒に瞑想したり、お経を唱えるのだそうです。間違いをおかすと罰があるからと、恐れから間違いを正すのではなく、自らが気づいて(悟って=awaken)いくことこそが、仏教の教えであると力説されました。校長室はPlace of peace (平和の部屋)なのです。

それから、帰国間際の本当に短時間でしたが、一郎さんの英語と話術パワーが炸裂!しました。英語で編集してあったタッピング・タッチのハイライトを持参のノートパソコンで見せながら、簡潔に的確に、しかも情熱を持って、タッピング・タッチを説明。しばらくするとパイパーさんが、「もう説得は十分されたよ!どんな風に学校で使えるか考えよう!」と真剣に言い出して・・・

本当に短時間ながら、タッピング・タッチの本質を捉えてくれ、学科事務長のジョシュアさんと具体的なアイデアをブレインストーミング。生徒指導においての使用、ヨガクラスでの活用、保護者向けの講座のほか、学校を使ってのリサーチには協力できるし・・・来年度、Shin Buddhism の国際大会があるらしく、ハワイにかなりの信者さんたちが集まるそうで、そこでの紹介もできたら・・・など、どんどんと話しは進みました。

ともあれ、今年度中には学校向けの何か講座をしてはどうか、詳細はメールでやりとり、というところで時間切れとなりました。ホテルまで自ら送ってくださり、Peace project として協力し合えたら嬉しいとなりました。

さて、帰国して・・・盛りだくさんの出会いを次に形にしていくには??
皆さんのアイデアや感想、お待ちしております〜〜〜!(祥子)

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ほんとうに色々な専門の人たちとの出会いがあり、これからの進展を楽しみにしています。ハワイでの出会いを豊かにしてくれた出村ミミさん、ありがとう!ホスピスハワイでのお仕事と、小さい子供さんの育児にたいへんな中、全てこころよくサポートしてくださって、こころから感謝しています。
それと、現地の方たちと連携して、インターナショナルなコンフェレンスみたいなものを企画したいと思っています。今のところ、緩和ケア、ホスピス、そしてタッピングタッチなどを重ねたようなものがよいのではないかと話しているのですが、日本からもいろんな人が参加できるようなものになればいいな〜と思っています。ぜひアイデアや感想をお願いしま〜す。是非ご一緒したいで〜す。(いちろう)

タイ訪問レポート

2007/11/01海外活動

みなさんお元気ですか?

まず、先日まで行っていたタイでは、北部にあるチェンマイ大学でのシンポジウムで多くの教員や学生たちにタッピングタッチを紹介することができました。そして、以前も訪れた南部の津波の被害の多かった地域では、高校の先生対象のミニ講座もできて、たいへん収穫が多かったです。(HPの活動報告にもアップしますのでご参照ください)

次回は、12月の半ばに再び訪れて、津波被害地区のナムケン小学校の生徒たちに会いに行く予定です。特に、全校500人中、いまだに50人ほどの生徒たちが津波のトラウマから感情的なトラブルを起こしているらしいので、その生徒たちとタッピングタッチのセッションを持つことを約束して帰ってきました。

あと、今回の訪問で知ったのですが、バンコクから100キロほどのところに、プラバーナンプーという寺院があります。そこには、エイズ被害を受けた方たちの大きなコミュニティがあり、2000人以上の人たちが生活されています。そこへ、チェンマイ大学の教授が、バイオマスの発電機を設置するために関わっておられて、紹介してもらい、12月に一緒に行くことになりました。仏教を中心としたよいケアが提供されているとのことですが、タッピングタッチによるケアが活用されるとよりよいケアが提供できると確信しています。

今のところ、12月のタイへは一般の応募は控えようと思っています。まだまだ信頼関係を育てたり、基礎になるアレンジメントをしているところですから、せっかく一緒にいってもらっても、十分に意味のある体験になるか分らないからです。でも、少し落ち着いたら、観光などを兼ねた「タッピングタッチ・ツアー」のようなものを企画してみたいと思いますので、楽しみにしておいてくださいね。

そのほか、冬の間に、新潟・柏崎にも訪れたいと思っています。冬の新潟は厳しく、震災のトラウマを抱えたまま辛い思いをしている人も多いと思いますので、少しでもサポートになれればと思います。もともと、新潟は自殺の率が高いらしいのですが、タッピングタッチによるトラウマや否定的感情の軽減効果などはとても有効だと思います。今のところ、この間の東京でのインストラクター講座でインストラクターになられた、新潟市の桜井ゆかりさんも含め、興味のある人も何人かおられますので、なんとかうまくアレンジしたいと思っています。興味がある人は、ご連絡ください。

アフリカのウガンダへは、来年の春に行くことになりそうです。

最後に、11月の15日(木)に東京の東邦大学でタッピングタッチのリサーチを行います。前回と同じで、脳波や血流の変化などを測りながら、セロトニンの変化を測定します。とても意味のある貴重なリサーチです。被験者を2名ほど必要としていますので、ボランティアしていただければ幸いです。よろしければご連絡ください。

いちろう

タッピング・タッチ、コスタリカ、そして平和憲法

2006/09/08中川一郎より

私の専門は臨床心理学です。20年以上にわたって米国で暮らしていたのですが、6年ほどまえに帰国して、熊野の山間部での生活を中心に活動しています。最近、世界遺産に登録された熊野古道の近くです。

米国では、臨床心理学者として仕事をしていたのですが、様々な仕事や体験を通して、「いくら理論や学問が発達しても、いくらたくさんの治療者や施設を増やしても、病を持った人たちは減らない」ことに気がついていきました。ご存知のように、米国は心理学や臨床の分野でも長い歴史があり、理論や研究の積み重ねはもちろんのこと、資格をもったカウンセラーやセラピスト(心理療法士)がたくさんいます。精神科、心理学、ソーシャルワーク、家族療法士など、さまざまな分野の専門家がいて、トレーニングや研修制度なども充実しているため、安心してクライアントを任せられる人たちも多いのです。それにも関わらず、社会全体でみると、病気の人たちは後をたたないのです。
 これまで米国では、Community Mental Health Center というものがたくさん設立されてきました。これは、ケネディ政権のころに、市民の精神衛生の大切さを認識したことによって全国規模で作られたのですが、予防的な働きも含めて、地域社会の精神的な健康にとても貢献してきました。しかしながら、米国は国家予算の半分を軍事にまわすような国になり、福祉や教育などへの予算が削られることによって、Community Mental Health Centerのあり方も徐々に変わっていったのです。残念ながら、現在は、大切な予防的なサービスはほとんどなくなり、重病の患者をみることが主になってしまっています。病気が重くなければ診てもらえないのが現状です。
 
 とにかく、「いくら施設や治療者がいても病人が減らない」という現実をまのあたりにして、私はこれまでの「治療モデル」には限界があり、ホリスティック(統合的)な視点をもったアプローチが必要なこと。さらに「個人、家族、そしてコミュニティが、自分自身で本来の健康を取り戻していくためのサポート」が何より必要なのだと確信するようになりました。このような背景や気づきをもとに、ケアしあうことによって、誰もが健康であれるような技法を開発できないかと試行錯誤を続けました。そして、多くの人たちの経験やフィードバックをもとに開発したのが「タッピング・タッチ」という技法です。
この技法は、不安、緊張、ストレス症状などを軽減する効果があり、関係性の改善などにも役立つため、様々な分野での利用が広がっています。最近では、看護における利用も注目され、がん看護やホスピスケアへの応用が試されています。教育では、保健室でのこころのケアとしての利用や、カウンセリングルームでの利用も効果的です。また、タッピング・タッチは、そのシンプルさや高度のトレーニングがいらないことなどもあって、災害支援などにも有効です。その為、これまでも国内外で紹介しているのですが、今年の春はコスタリカへ行って紹介してきました。

コスタリカは、内戦をなくすためには軍隊をなくすことだと気がつき、1949年に常備軍を廃止した国です。国の安全や防衛のために、警察と国境警備隊がありますが、あわせて数えても1万人に満たないような規模のものです。そして、教育こそが国づくりに大切だということで、軍事費をそのまま教育に回すことに決め、基本的には今も同じような政策がとられています。
先ほど米国のことを話しましたが、コスタリカは米国とはまったく正反対の国だと言えるでしょう。米国は、軍産複合体が政経の中心を握り、戦争をしていないとやっていけない国です。コスタリカは、軍事費に税金を使わず、軍隊なしでも国が安全でいられることを示し、中米の平和に貢献してきました。人口400万の小さな国ですが、平和への貢献度の高さでは、米国よりも重要な国だと思います。
そんな国に2週間ほど滞在したのですが、タッピング・タッチはコスタリカでも好評でした。実は、平和憲法にかんするドキュメンタリーのための取材が主な目的で行ったのですが、タッピング・タッチに興味を持った女性達が、コスタリカや中米でも役立てたいからと、ワークショップを設けることになったのです。運良く、コスタリカの「チャンネル6」という番組から取材があり、朝の健康関係の番組で放映され、急遽おこなった3時間のワークショップには、40人以上の人が集まりました。
思っていなかった以上の人が集まってくださり、使った場所が一杯になってしまったうえに、夜の6時から9時までの3時間の講座だったのですが、最後の最後までみなさん熱心に参加されていました。彼らの話すスペイン語はまったく出来ないのですが、同時通訳のできる方がついてくださって、本格的な講座がもてたのはありがたかったです。

 そのほか、リンコン・グランデ高校へも訪れ、紹介することができました。貧困や犯罪がはびこる地域で、生徒たちの間での暴力なども絶えない学校なのですが、不安や否定的な感情を軽減する効果のあるタッピング・タッチはとてもよく受けとめられました。
実際には、校長先生と生徒指導の先生に説明し体験してもらってから、30人ほどの学生のいるクラスを訪れました。もちろん始めは「これなに?」って感じでしたが、しばらくして分かってくると、とっても楽しそうでした。「帰ったら家族の人たちにしてあげたい」という感想や、質問をしに来てくれた生徒が多かったのが印象的でした。体験された先生方の感想としても、子ども達の関係作りや暴力の軽減などにも役立ちそうだとのことで、継続して関わっていきたいと思っています。国の進めている平和と人権教育の導入はまだこれからとのことでしたので、これからが楽しみです。
あとほんの少しだけ、先に書いた平和憲法に関するドキュメンタリーですが、コスタリカの元大統領カラソ氏やノーベル平和賞受賞者のウイリアム氏などとのインタビュー、それから一般の人たちや学生達の街頭インタビューなども収録でき、とっても収穫の多い旅でした。
コスタリカは平和教育と軍隊を持たない国であり、今の日本の私たちにとても大切なメッセージを持っています。高校生達にインタビューするチャンスもあったのですが、軍隊がないことによる安全性や話し合いによる解決の方法などを語ってくれて、彼らの存在に感動しました。
ご存知のように、日本では、憲法を変えようとする動きが大変強まっています。9条を取り除き、集団的自衛権を認めることで、米国と一緒になって戦争していく国になることが懸念されています。教育基本法も変えることで、再び愛国心を植えつけ、国家への忠誠心と戦争を肯定する考え方を共有させようとする動きもあります。そんな中、平和と人権を守りたい人たちがいろいろな働きかけをし始めているのですが、私もその一人です。

タッピング・タッチは、人々の心をケアすることによって、社会の調和や健康を促進しようとするものです。そして、ドキュメンタリーは、本当のことを人々に知らせることによって、戦争をする国へと逆戻りし、再び悲惨な道を歩まなくてもよいようにしょうとするものです。一見、まったく違ったもののようですが、ホリスティックな視点からは、密接につながっていると感じています。

 タッピング・タッチ www.tappingtouch.org
 あなたの平和憲法を知っていますか? www.earth-citizen.org