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【インタビュー】移住先での再始動は夫婦で二人三脚~沖縄のインストラクター杉山百合俊さん

2025/12/16インストラクターより

「休止期間」を経て、タッピングタッチの本質への理解を深めたインストラクター・杉山百合俊さん。
沖縄での暮らしや働き方の変化、そしてどのように再始動へと歩みを進められたのか──その経緯と現在の思いを伺いました。

赤ちゃんにタッピングタッチする杉山さん

タッピングタッチとの出会い——自分でできるケア、仲間とできるケア、家族とできるケア
「2011年の東日本大震災直後、『ぜひ、NPO法人心の救急箱のみんなにもタッピングタッチを身につけてほしい』と東京のインストラクターが広島に飛んできて講座を開いてくれたことが、タッピングタッチとの出会いでした」

杉山さんが広島県や山口県の仲間と行っている「心の救急箱」の理念は、『自分でできるケア、仲間とできるケア、家族とできるケア』を伝えること。
これは、タッピングタッチのケアの方法・本質と深く重なります。そして、心の救急箱の友人とともに養成講座を受講して認定インストラクターとなり、学校や子育て支援、老人介護施設など、さまざまな場へタッピングタッチの活動を広げていきました。

 

■ 沖縄移住と活動休止——立ち止まったから見えたもの
山口県ではスクールカウンセラーとして子どもとタッピングタッチをしたり、地域で積極的に講座を開催されていた杉山さん。しかし、2020年3月の沖縄移住後、状況は大きく変化しました。
「少し働きすぎたかなとの思いや、大切な家族を相次いで見送った節目でもあったため、自分を見つめ直す時間が必要だと感じました。そこで沖縄の自然豊かな北部に移住しました。すぐにスクールカウンセラーの職を得ましたが、タッピングタッチを提案できる雰囲気ではなく……。自分自身が地域で役に立てているという実感が持てなくなってしまったんです」
「子どもたちと一緒にタッピングタッチをすることが難しくなって。相互のケアを通じて得る深い安心感や、相手の存在を感じる体験が好きだったので……。
それが失われた悲しみが大きく、情熱が下がってしまったのだと思います」

 

■ 沖縄の自然と自分をいたわる生活
移住後は、農業や森林セラピー、パーマカルチャー(循環型の暮らし)を学び、草木染を楽しむなど、自然とともに“地球を感じる”生活を送る杉山さん。自然の中で、「地球にやさしい暮らしとは?」「自分をいたわるとは?」と静かに問い直す日々が続きました。 
そして、現在はスクールカウンセラーから、教育委員会で子どもの発達検査業務を担当する職へと変わりました。子どもとタッピングタッチをする機会はますますなくなったものの、杉山さんは「安心感や寄り添う姿勢といったタッピングタッチの本質は、日々の支援の中で生きています」と語ります。その言葉からは、タッピングタッチとのつながりが形を変えながらも、むしろ深まっているようにも感じられました。

 

■ 再始動は“頼まれごと”から——背中を押した妻のアシスト
活動再開のきっかけは、神奈川県の中田ご夫妻(インストラクター)でした。「オンライン体験会に参加した沖縄の方に、リアルでタッピングタッチをする場を杉山さんが作ってくれたら」という依頼が届きました。しかし、講座開催に踏み出すエネルギーや情熱は、まだ戻っていませんでした。
そこで相談したのが、タッピングタッチの“種まきさん”でもある奥さま・教江さん。教江さんはタッピングタッチ基礎講座A・B・Cを修了されており、活動を共にするパートナーです。すると、あっという間に段取りを整えてくれたといいます。

「じゃあ、知り合いのカフェで体験会を2回、その後に講座を1回やってみよう」

教江さんにも、そのときのことをお伺いしました。
「時来たり、と思ったんです。(杉山)百合俊さんにとっても、地域の人にも、世界の人にも。誰でも、どこでも、気軽にできるタッピングタッチを知ってもらい、使ってもらう時が来たと感じました。それに、自然の癒しと、人がふれ合うタッピングタッチの癒し——どちらも大切だと私は思います。
そこで、百合俊さんがインストラクターとして再び動き出せるよう、背中を押しました。」
杉山さんは笑って話します。
「通勤に片道1時間半、往復3時間。正直、タッピングタッチの活動まで手が回るかなと思いました(笑)。でも、人に頼まれたことに応えてみたら、道が開けるときもあるんですよね」

そして体験会を開催してみると——
「あ、なんかタッピングタッチっていい」「人とつながれるなぁ」「人と地域とつながれるは大事なことだなぁ」と、感じられたそうです。

海外のカップルにタッピングタッチをする杉山さんご夫妻


■ 沖縄から世界へ——マインドフルネスと平和
地元のカフェでの体験会は、地域のつながりにとどまらず、観光客の多い沖縄ならではの国際交流の場にもなりました。マインドフルネスの考えはヨーロッパでも広がっています。タッピングタッチを体験した海外旅行者は「手のぬくもりで自分の体を再び感じることができた」と感想を寄せられ、「先日のタッピングタッチの体験がすごくよかった」とカフェを再訪される方もいらっしゃったそうです。

「海外の方とのタッピングタッチの交流を通じ、言葉を超えた癒し・マインドフルネス・内なる平和の価値を再確認しました。今、世界的な緊張が強い中で、個人間で緊張を緩和していくことは、すごく身近な平和活動だと思います。それをこの場でできる意義を感じています」「タッピングタッチってすごいなぁ」と杉山さんは語ってくれました。

 

■ 過去の“種”に励まされて——友人の遺言とめぐるつながり
再始動のエネルギーの源には、山口県時代にタッピングタッチを伝えた大切な友人からの「タッピングタッチを続けてほしい」という遺言があったそうです。「自分が蒔いた種に、今、自分が励まされているなと思うんです。目の前の人を大切にすることは、巡り巡って自分にも返ってくるんだなと」教えてくれました。

 

■ これからの活動と仲間へのメッセージ
最後に、現在活動を休止しているインストラクターや、仲間へのメッセージを伺いました。
タッピングタッチの活動が思うようにできない時期、「そんな自分を責めてしまうこともあった」と杉山さんは振り返ります。そんなとき、オンラインの”タッピングタッチの集い”で仲間からかけられた「渡り鳥も先頭を交代する。頼ったり、休んだりしていいんですよ」という言葉が、心に深く届いたそうです。

「一人でやろうとしなくていい。ご縁ってありますね。そして、人生にはいろいろな季節があるんだなぁ。今、私にまた“芽吹き”の季節が巡ってきたのだと思います」
「ゆっくり、やさしく、ていねいに。あまり急がず、でも確かに進んでいきたい。そう思うとワクワクします」と語る杉山さんの表情は、とても穏やかで晴れやかでした。

再始動から3か月目、協会HPで体験会を見つけたと那覇から片道1時間半をかけて来てくださった方もいたそうです!
あなたも、イベントカレンダーをチェックして、沖縄で杉山さんご夫妻とタッピングタッチを楽しみませんか?

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深い悲しみを乗り越え、再び歩み始めた~インストラクター 奄美の久保さん・インタビュー

2025/07/01協会より

2025年1月、久保さんは初めてオンラインでタッピングタッチの体験会を開催しました。参加したのは医療や介護の現場で働く17人。画面越しとは思えない、あたたかい時間となりました。ここにたどり着くまでには、長い時間と多くの経験がありました。
看護師として働きながら、思春期の息子さんを育てていた頃、久保さんはタッピングタッチと出会います。けれどその後、息子さんを亡くし、ご自身も三度の大きな手術を経験しました。体も心も深く傷つきながら、「なんとなくいい」と感じるタッピングタッチを、自分に、そして訪問看護の現場で静かに続けてきました。
でも、それをうまく言葉にすることができないもどかしさを抱え、インストラクターとして伝えることができないまま、時が過ぎていきました。

そんな久保さんが今回の体験会を実現できたのは奄美へ帰郷後の「言薬!(ことぐすり)」を大切にする医師・大坂巌先生との出会い(オンライン)と交流がきっかけです。「言薬!」とは、大坂先生が提唱する概念で「思いやりのある肯定的な言葉が、ケアを必要とする人にとって薬のように作用する」という考え方です。
「インストラクターとして形に、言葉にしてみたらどうか」とタッピングタッチにも関心を寄せてくれた大坂先生が声をかけ、申込窓口まで引き受けてくれました。

 

五感で届ける、オンライン体験会の工夫
体験会に向けて、久保さんは約5か月をかけて準備を重ねました。
奄美の自然の音や風景を動画におさめ、参加者が集まるまでの時間や休憩中、そして『腕だけ散歩』の時間などに流しました。
「伝えたいことがたくさんあったんです。でも、それだけでは届かない」
これまで出会い、一緒に学んだ仲間たちのアドバイスも受けながら、ただ「伝える」のではなく「伝わる」ことを大切にして、スライドを丁寧に作り上げていきました。
体験前後の変化を感じやすくするため、簡単なアセスメントシートも使いました。
終了後のシェアタイムでは、それぞれが自分の言葉で感じたことを分かち合い、共感や気づき、深い学びの時間が生まれていました。

 

病と喪失の中で見えてきた、やさしさの意味
久保さんがタッピングタッチに出会ったのは、大阪で看護師として働いていた頃です。初めては大阪府看護協会の研修会で中川祥子(事務局長)さんから、その後、中川一郎さん(開発者)からも直接学ぶ機会を得ました。
「なんてやさしいふれ方なんだろう」
そのときの感覚は、これまでの看護を振り返るきっかけにもなったそうです。その後インストラクターとなり、訪問看護の現場や家庭でも自然と使うようになりましたが、思春期の息子さんは「させてくれなかった」といいます。
そしてその翌年、病を持っていた息子さんはこの世を去りました。
「タッピングタッチをしてあげたかった」という想いを抱えながら、自分自身の大きな病気や手術も経験。
息子さんにできなかった分をというわけではないけれど、自分にタッピングタッチをして、つらい時期を乗り越えてきたそうです。

 

自分にやさしくあるために
療養中、久保さんはオンラインで学べるさまざまな勉強会に積極的に参加しました。
ノンバイオレント・コミュニケーション(NVC)は、自分の中にある「本当に大切にしているもの」の理解に役立ちました。
ポリヴェーガル理論は、人がどうやって安心やつながりを感じるのか、その仕組みを教えてくれました。
とくに、哺乳類だけが持つ「腹側迷走神経系」が、表情や声、やさしいふれあいを通じて安心感をもたらすことを知り、これまでのタッピングタッチの体験とつながっていったそうです。

「そうか、これだったのか」
中川一郎さんがインストラクター研修で話していた「サルのグルーミング」も思い出し、知識と実感が結びついた瞬間だったと振り返ります。こうした学びを通して久保さんは、自分が「自己一致」していなかったことに気づき、自分への慈悲とマインドフルネスを大切にするようになります。
そしてタッピングタッチのマインドフルネスについて、「身体性とセルフコンパッションが合わさっている」と表現していました。これは、かつて感じていた「なんとなくいい」という感覚の、久保さんなりの言語化のひとつですね。

 

少人数で、ゆっくりと、自分のペースで
現在、久保さんは奄美大島で週に3日ほど看護師として働きながら、毎月第3土曜日に「タッピングタッチ基礎講座A」を開いています。
2人ほどの少人数で、安心できる場を心がけています。
引きこもりの子を持つ母親、人と話すことが苦手な方、そして医療や介護の現場で日々がんばっている人たちに、久保さんはそっと声をかけ、自分のペースで届けています。
「今年は少人数で、ゆっくりと。参加してくれる方のためでもあるし、リハビリ中の自分のためでもあるんですけどね」
無理をせず、焦らず、それでも確かな歩みで。
久保さんの活動はこれからも、やさしく広がっていきそうです。

 

インタビューを終えて
久保さんの言葉一つひとつには、静かだけれど揺るがない強さと、深いやさしさが満ちていました。
タッピングタッチは、ただ相手や自分をケアするだけでなく、慈しむ方法でもあります。
そして、その穏やかなふれあいは、「今ここ」に意識を向けるマインドフルネスへと、私たちを優しく導いてくれます。
この実践は、他者や社会、自然そして地球全体と調和しながら生きる、ホリスティックな在り方へとつながっていくものです。

身体を通して気づきを得ること。
自分にやさしくふれること。
その一つひとつの積み重ねが、自分への慈悲となり、やがて安心と深いつながりを育んでいく――。
久保さんのこれまでの歩みが、まさにそれを物語っているように感じました。
あなたも、自分にやさしくふれ、マインドフルネスな時間を過ごしてみませんか?

 

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